【ウェナッチー 10月5日】
ワシントン州ウェナッチーの飛行機「ミス・ビードル号(Miss Veedol)」が、本日、史上初の太平洋無着陸横断飛行を成し遂げた。この歴史的偉業を達成したのは、米国人飛行士クライド・パングボーン氏とヒュー・ハーンドン・ジュニア氏の二人である。
出発は、9月30日午後、日本の青森県・三沢海岸。当初の予定では、三沢飛行場からの離陸が見込まれていたが、滑走路の長さが足りずやむなく浜辺からの発進となった。補助車輪を空中で切り離すという奇策も用いられた。
機体は特別改造されたベルランカ製モノプレーンで、燃料搭載量は約3,000リットル。この重装備で彼らは、途中一度の着陸もなく約7,000キロを飛行し、太平洋を一気に横断。およそ41時間の空中航行を経て、無事アメリカ・ワシントン州ウェナッチー近郊に着陸した。
この快挙は、人類と航空技術の限界に挑んだ偉大な冒険として、ライト兄弟の初飛行に続く新たな金字塔である。特に、これまで大西洋横断に比べて難度が高いとされていた太平洋航行を、ついに“ノンストップ”で実現した意義は大きい。
なお、彼らが目指していたのは、アメリカ新聞協会による賞金2万5千ドル。この飛行によって、その達成が認定される見込みだ。
広大な太平洋が「越えられぬ壁」ではなくなった今、世界の空はさらに近くなるだろう。この日、空の歴史がまた1ページ書き加えられた。
— RekisyNews 国際面 【1931年】