電波に乗った“秋の祭典” ワールドシリーズ、ラジオ初中継で新時代へ

【ニューヨーク 10月5日】

本日、1921年ワールドシリーズ第1戦がポロ・グラウンズにて開催され、メジャーリーグ史上初めてこの試合の模様がラジオで中継された。ニューヨーク・ヤンキースとニューヨーク・ジャイアンツの“同郷対決”に、スタンドの熱狂がそのままマイク越しに家庭へと届く新たな試みが実現した。

この歴史的中継を実施したのは、ニュージャージーのWJ局やマサチューセッツのWBZ局で、実況を務めたのは報道陣としても著名な グラントランド・ライス氏、もしくはトミー・コーバーン氏とされている。なお、広く知られるピッツバーグのKDKA局がワールドシリーズ中継に参加するのは翌1922年以降となる。

今回のラジオ放送は「ワールドシリーズ初のラジオ中継」として記録されたが、プロ野球のラジオ中継自体は、前年1920年に既に実施されている。それでもこの試合は、全米が注目する「秋の祭典」の実況が初めてラジオの電波に乗った瞬間として、放送史上の転換点となった。

観客で埋め尽くされた球場の歓声とバットの音が、受信機を囲む人々の想像力を刺激し、「聞く野球」の醍醐味を初めて提示。球場に行かずとも試合を“体験”できるこの仕組みは、ラジオの可能性とスポーツ観戦の未来を大きく広げるものとなった。

今後、ラジオはスポーツのみならず、政治、音楽、演劇へと広がっていくだろう。1921年10月5日は、電波が野球を包み込んだ記念すべき日として記憶されるに違いない。

— RekisyNews スポーツ面 【1921年】

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次