【ボストン 10月4日】
本日、アメリカのコンピュータ科学者リチャード・ストールマン氏が「フリーソフトウェア財団(Free Software Foundation, FSF)」の設立を発表した。財団は、自由に使用・改変・再配布できるソフトウェアの普及と保護を目的とする非営利団体であり、商業ソフトウェアによる囲い込みが進む中、「ソフトウェアは人々の共有財産であるべきだ」という理念を掲げる。
ストールマン氏は、昨年立ち上げたGNUプロジェクト(Unix互換の完全自由なOSを目指す取り組み)の中心人物であり、すでに「Emacs」などの有力なツールを公開してきた。今回の財団設立により、開発資金の調達や法的支援、ライセンスの普及が本格化する見通しだ。
特に注目されているのが、今後財団が正式に整備・推進していく予定の「GNU一般公衆利用許諾書(General Public License, GPL)」である。これは、ソースコードの公開と再配布を義務づけることにより、ソフトウェアの自由を法的に担保しようとする試みであり、既存の著作権制度の在り方に一石を投じるものだ。
コンピュータの普及とともに、ソフトウェアの開発と使用の自由をめぐる議論は今後ますます注目されるだろう。「私はソフトウェアの自由のために人生を捧げる」と語るストールマン氏の信念が、どこまで社会に影響を与えるか注目される。
— RekisyNews 科学技術面 【1985年】