米国初の商用水力発電、ウィスコンシン州で運転開始──小都市アップルトンが電化の先陣に

【アップルトン(ウィスコンシン州) 9月30日】

本日、米国ウィスコンシン州の地方都市アップルトンにおいて、合衆国初となる商用水力発電所「ヴァルカン・ストリート・プラント」が操業を開始した。施設はフォックス川の水流を利用し、隣接する製紙工場や住居へ電力を供給するという新たな試みに踏み出した。

この発電所の設計・技術指導には、トーマス・エジソンの創設したエジソン電気照明会社の方式が導入されており、地方都市における小規模な電力網の先例となる可能性を秘めている。発電は水車で駆動された発電機により行われ、送電線を通じて複数の施設に電灯を灯しているという。

この日の夜、アップルトン中心部では米国の一般家庭として初めて、民間住宅に水力による電灯がともる光景が見られ、住民らは驚きと喜びの声をあげた。地元事業家H・J・ロジャース氏の主導で設置されたこの発電所は、現在のところ出力に限りがあるものの、「次代の電力供給の形」として関心を集めている。

電灯の明るさはやや不安定との声もあるが、火災や煤の心配がない点は大きな利点だ。発電所の関係者は「水流の安定性や設備の調整を重ね、今後はより多くの建物に送電していきたい」と意気込む。

これまで主に都市部の蒸気発電所に限られていた電力供給の概念が、地方における自然資源を活かした発電へと広がりを見せたことは、米国の電化の歴史に新たな一歩を刻む出来事といえよう。

— RekisyNews 科学技術面 【1882年】

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