【東京 9月29日】
昭和・平成をまたいで角界をけん引し続けた大横綱・千代の富士(本名:秋元貢、34)が本日、国民栄誉賞を授与された。
内閣総理大臣官邸にて行われた授賞式には、海部俊樹首相をはじめ各界の関係者が出席。力強くも気品ある土俵姿で長年国民を魅了してきた功績が、国を挙げて讃えられた。
千代の富士は1970年に初土俵を踏み、“ウルフ”の異名で知られる鋼の肉体と卓越した技で一時代を築いた。
身長183cm・体重126kgと、横綱としては小柄ながら、筋肉質な体と闘志溢れる取り口で“技能と気迫”の象徴とされ、1981年の横綱昇進後、通算1045勝、幕内31回優勝という圧倒的な記録を打ち立てた。
授賞式では、海部首相が「国民に大きな夢と希望を与え続けた偉大な力士」と称賛し、賞状と記念品が手渡された。千代の富士は「このような名誉ある賞をいただき、身の引き締まる思いです。これからも相撲道に精進します」と謙虚に語った。
スポーツ界からの国民栄誉賞は、王貞治氏、長嶋茂雄氏に続いて3人目。
これにより、千代の富士は「国民的英雄」として、相撲界だけでなく日本全体の象徴的存在となった。
今後の土俵人生、そしてその後に続く若い世代への影響も含め、“千代の富士時代”の遺産は長く日本人の心に刻まれ続けるだろう。
— RekisyNews スポーツ面 【1989年】