【ウィーン 9月28日】
本日、宮廷作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト氏(35)が、新作ジングシュピール『魔笛(Die Zauberflöte)』の楽譜をすべて完成させた。初演は今月30日にウィーン郊外のウィーデン劇場で予定されており、稽古はすでに最終段階に入っている。
台本は、劇場支配人エマヌエル・シカネーダー氏によるもので、エジプトを舞台とした幻想的な物語に、愛と試練、啓蒙思想を織り交ぜた構成となっている。主人公タミーノと王女パミーナの恋物語、そして闇の女王との対立構造は、多くの観客に感銘を与えることが期待される。
特に注目されているのは、「夜の女王のアリア」や「パパゲーノの登場場面」など、技巧とユーモアを兼ね備えた楽曲の数々である。軽快な語りと歌が交互に展開するジングシュピール形式を採りながらも、モーツァルト氏の筆はかつてなく自由で豊かだ。
劇場関係者によれば、モーツァルト氏は9月中旬から断続的な体調不良に見舞われながらも、驚異的な集中力で作曲を続け、ついに本日、全曲の譜面が完成したという。
完成を祝してシカネーダー氏は、「この作品は単なる娯楽にとどまらず、人間の魂の光と闇を描く寓話となるだろう」と語った。
『魔笛』は、王侯貴族のみならず市井の民衆にも広く門戸を開いた劇場での上演となるため、モーツァルト芸術の集大成がより多くの人々に届く機会となる。今後の評価と反響が注目される。
— RekisyNews 芸術面 【1791年】