プログラムは自由であるべき──MITの研究者ストールマン氏、GNU計画の創設を宣言

【ケンブリッジ 9月27日】

マサチューセッツ工科大学(MIT)人工知能研究所のコンピュータ科学者、リチャード・ストールマン氏が本日、「GNUプロジェクト」の創設を公式に発表した。GNU(グヌー)とは「GNU’s Not Unix」の略称であり、Unixと互換性を持つ完全な自由ソフトウェアのオペレーティングシステムを開発する計画だ。

ストールマン氏は、既存のソフトウェアが次第に商業化・非公開化され、開発者間での自由な共有や改良が妨げられている現状に強い危機感を抱いたと語る。「コンピュータの世界には連帯と協力の文化が必要だ。プログラムは誰もが使い、学び、改良し、再配布できるべきだ」という理念が、このプロジェクトの根幹にあるという。

GNUシステムは、Cコンパイラ、エディタ、シェル、デバッガなど多様なツールを自由ソフトウェアとして順次開発・公開する計画となっており、最終的には完全なOSとして機能することを目指している。発表と同時に、誰もが無償でソースコードにアクセスでき、改良を加えられるという新たな開発モデルが提示された。

計画の詳細は、コンピュータ関連のネットワーク掲示板を通じて広まりつつあり、今後、全世界の開発者が参加する分散的な協力体制が形成される可能性もある。

この取り組みは、ソフトウェアを「製品」ではなく「共有される知識」と捉える新たな思想的挑戦であり、技術革新だけでなく知的所有権や倫理を巡る議論をも巻き起こすことが予想される。

— RekisyNews 科学技術面 【1983年】

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