インカ最後の王、トゥパク・アマル斬首──征服から40年、帝国の灯が完全に消える

【クスコ 9月24日】

本日未明、スペイン副王領当局により、トゥパク・アマル殿(正式名:トゥパク・アマル・インカ)が斬首刑に処された。これにより、「ビルカバンバのインカ帝国」と呼ばれた最後のインカ王政権は、事実上その終焉を迎えた。

処刑は、旧都クスコの中心広場で公開のもと執り行われ、現地のケチュア族住民やスペイン人入植者など数千人が集まり、その瞬間を静かに見届けた。トゥパク・アマル殿は王冠と赤いマントを身につけ、堂々とした態度で刑場に現れたとされる。

トゥパク・アマルは、インカ帝国の名残を保って密林の奥地ビルカバンバに拠った王家の末裔で、先代ティトゥ・クシ・ユパンキ王の崩御後、帝国再興の希望を託されて即位。スペイン支配に対し長年抵抗を続けてきたが、今年初めに副王フランシスコ・デ・トレドの命により軍勢がビルカバンバを制圧、捕虜としてクスコに連行されていた。

処刑を命じたスペイン側は、「王権による反乱の芽を完全に摘むため」としているが、一部の聖職者や入植者の間からは「寛容を欠く過酷な処置」との声も上がっている。

かつてアンデスを支配した大帝国の最後の王が処刑されたことで、1533年のアタワルパ処刑から続いたインカ王族の抗争と希望は、完全に終止符を打たれた。広場にいたある先住民の女性は、「我らの太陽は今、完全に沈んだ」と涙を流しながら語った。

— RekisyNews 海外面 【1572年】

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