【ミュンヘン 9月22日】
バイエルン王国の首都ミュンヘンにて本日、作曲家リヒャルト・ワーグナー(56)の新作オペラ『ラインの黄金』が、ミュンヘン宮廷歌劇場で華々しく初演された。
本作は、ワーグナーが構想中の四部作「ニーベルングの指環」の第1作にあたるもので、神々・人間・小人・巨人たちの権力と欲望をめぐる壮大な神話劇が展開される。
演出は重厚にして幻想的で、舞台装置には革新的な機構が導入された。観客は神々が空を渡る場面や、ライン川の底に潜る場面などに息を呑み、ワーグナー独自の「楽劇」スタイルを目の当たりにした形だ。音楽面では、各登場人物や概念を象徴する“ライトモティーフ(示導動機)”が随所に配置され、観客の感情を巧みに導いた。
しかしながらこの初演は、ワーグナー本人にとっては不本意なものであったとされる。彼は『ラインの黄金』を含む四部作全体が、自身の構想による「バイロイト祝祭劇場」において、連続上演されるべきものとの信念を抱いていた。今回の上演は、ワーグナーの庇護者であるバイエルン国王ルートヴィヒ2世の強い希望によって実現したもので、作曲家自身はその意図と異なる形式での初演に複雑な思いを抱いている模様だ。
とはいえ、『ラインの黄金』はその壮大なスケールと革新的手法により、近代オペラの新たな潮流を象徴する作品として高く評価されている。観客からは「想像を超える神話世界」「音楽と舞台の完全な融合」といった賞賛の声が相次いでおり、今後の展開に大きな期待が寄せられている。
バイロイトでの理想的な上演を目指すワーグナーの夢に向け、この初演がどのような意味を持つのか。楽劇の新時代は、いま確かに幕を開けたばかりである。
— RekisyNews 芸能面 【1869年】