【東京・両国 9月22日】
大相撲秋場所十三日目の本日、両国国技館は歴史的一瞬に沸いた。横綱・千代の富士(九重部屋、本名・秋元貢、34歳)が関脇・琴ヶ梅を押し出しで破り、通算勝利数を965勝とし、従来の最多記録を更新。ついに歴代単独1位の座に就いた。
これまでの最多勝記録は、元関脇・大潮憲司(当時の年寄・大潮)が保持していた通算964勝。千代の富士は1971年の初土俵以来、幾度もけがに苦しみながらも復活を遂げ、横綱として異例の長期在位を続けてきた。
13日目の取組、館内には割れんばかりの拍手と歓声が響き渡った。土俵下で支度部屋へ戻る千代の富士に、観客からは祝福の紙テープが舞った。取り組み後のインタビューで、千代の富士は「通過点にすぎない。これからも一番一番、大事に取り組みたい」と、変わらぬ謙虚さをにじませた。
千代の富士は昭和・平成をまたぐ時代を代表する横綱として、数々の記録を打ち立ててきた。筋肉質で引き締まった体格から「ウルフ」の異名をとり、速攻と技の巧みさで多くの相撲ファンを魅了。通算勝利記録はもちろん、優勝回数・横綱在位数でも歴代上位に名を連ねる。
相撲協会の八角理事は「今場所中の達成は誇らしい。千代の富士関の努力と覚悟の賜物」と称賛を惜しまなかった。
今後、千代の富士がどこまで記録を伸ばすか、相撲界だけでなく日本中の注目が集まっている。
— RekisyNews スポーツ面 【1989年】