英国の学者トールキン氏、児童向け冒険譚『ホビットの冒険』を発表──妖精や竜の世界へ誘う新作

【ロンドン 9月21日】

本日、英国のジョージ・アレン・アンド・アンウィン社より、新たな児童向け文学作品『ホビットの冒険(The Hobbit)』が刊行された。著者は、オックスフォード大学で英語学を教えるジョン・ロナルド・ロウエル・トールキン氏。ケルト神話や古英語詩に造詣の深い同氏が、これまでの研究と想像力を交差させて生み出した本書は、妖精やドワーフ、ドラゴンが登場する幻想的な冒険譚として、書店関係者の間で早くも話題を集めている。

物語の主人公は、ホビット族と呼ばれる小柄な種族の一人、ビルボ・バギンズ。静かに暮らしていた彼が、魔法使いガンダルフと13人のドワーフとともに旅へ出ることで、読者は地図にない幻想世界「中つ国(Middle-earth)」へと誘われる。旅の途中では、森のエルフやトロル、恐るべき竜スマウグとの遭遇が描かれ、読者を息もつかせぬ展開へと引き込む。

本作は、もともとトールキン氏が自分の子どもたちのために語っていた物語をもとに執筆されたとされる。児童文学として発表されたにもかかわらず、巧緻な世界設定と古英語的語彙に裏打ちされた文体は、大人の読者からも高い評価を得ている。批評家の中には「ルイス・キャロル以降の英国ファンタジーの到達点」と称する声もある。

なお、同書にはトールキン氏自身が描いた地図やイラストが添えられており、物語世界の広がりを視覚的にも補完している。

今後、英国以外の諸国でも翻訳が進められる可能性が高く、児童文学界に新たな古典が誕生したといえそうだ。

— RekisyNews 文化面 【1937年】

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