【東京・日本橋 9月21日】
東京・日本橋の老舗百貨店三越呉服店にて、本日、我が国初となる「ファッションショー」が開催された。
西洋風の舞台と照明が設けられた特設会場には、多くの婦人客や業界関係者が詰めかけ、洋装モデルが音楽に合わせて登場するたびに、会場からは感嘆の声が漏れた。
この試みは、フランスやアメリカの百貨店ではすでに定着している「デパートによる流行提案」の一環として、三越が独自に企画したもの。
「婦人の生活に寄り添う美の提供」を掲げ、洋装部門が中心となって企画され、プロの洋裁師とモデルを用いて演出された。
本日のショーでは、秋冬の新作コート、ドレス、帽子など約30点が紹介され、色使いや素材の斬新さに注目が集まった。モデルたちは一様に微笑を浮かべ、舞台袖から登場して中央で立ち止まり、ゆったりと歩く西洋式の「モデル・ウォーク」を披露。
この演出は、商品をただ展示するのではなく、着用した際の雰囲気や動きも伝える新しい販売手法として高く評価された。
観客の中には、「実際に着た姿を見ると、同じ服でも印象が違う。大変参考になった」と語る婦人の姿もあり、今後の婦人服販売に一石を投じる画期的な試みとなったことは間違いない。
また、今回のショーは入場無料で行われ、一般客にも開かれた催しとして百貨店の新たな役割を示すものとなった。
三越側は、今後も定期的に開催を検討しており、「単なる販売の場から、文化を発信する拠点として進化していく」と意気込んでいる。
— RekisyNews 文化面 【1927年】