【ロンドン 9月20日】
本日、イギリス議会は「職業紹介所法(Labour Exchanges Act)」を可決し、国として初めての公的失業保険制度の導入に向けた法整備が本格的に始動した。これにより、全国各地に職業紹介所(Labour Exchange)が設置され、労働者と雇用主の仲介を国家が担う新たな仕組みが確立されることになる。
法案は、自由党政権のデビッド・ロイド・ジョージ蔵相の主導により提出されたもので、急速な工業化と都市化に伴い増加する失業者への対策が主な狙い。職を失った労働者が自力で雇用を探す困難を軽減し、また雇用主側にも必要な人材を速やかに確保できる手段を提供することで、労働市場の流動性を高め、社会の安定を図ることが期待されている。
紹介所は、労働者が無料で登録できる仕組みで、賃金や労働条件を明示した求人情報が掲示され、即時の職業紹介が可能となる。農業、工業、建設、鉄道、家事労働などあらゆる業種が対象とされており、今後数年で全国に約200ヶ所の設置が見込まれている。
同法の成立により、貧困や浮浪を防ぎ、「働く意志のある者には職を」という原則が国家の責任として明文化されたことは、英国福祉制度の重要な一里塚といえる。ロイド・ジョージ蔵相は、「この法律は、貧困の構造に風穴を開ける最初の一撃である」と力強く語った。
なお、来年度からは、この制度に失業保険給付が段階的に組み合わさる予定であり、労働者の生活保障と労働意欲の両立を目指す制度設計に注目が集まっている。
— RekisyNews 経済面【1909年】