【東京 9月20日】
本日、編集者・花森安治氏が中心となって創刊した生活誌『美しい暮しの手帖』が、書店にて一斉に発売された。終戦から3年、物資も情報もまだ乏しい中、「戦後のくらしを自分たちの手で美しく創りなおす」という強い理念のもとに誕生した同誌は、生活に役立つ実用記事から家庭料理、手芸、インテリアに至るまで、多彩な特集を掲載。市民の間にさっそく反響を呼んでいる。
本誌は、元・大政翼賛会の宣伝部に属し、戦時中はプロパガンダの旗手として活動していた花森氏が、「戦争に加担した自らへの贖罪」として、平和で質素な暮らしを応援する誌面づくりを志し、企画から編集、装丁、さらには表紙絵に至るまで一手に引き受けたもの。
創刊号の表紙には、花森氏自筆による柔らかなタッチのイラストが用いられ、文字の書体やレイアウトにも独自の美意識が反映されている。ページをめくれば、「自分でつくる服の型紙」や「栄養を逃さない調理法」、さらには「すぐできる修繕術」など、生活者目線で丁寧に綴られた記事が並び、戦後日本の新しい生活文化を提案している。
発行元は「衣装研究所」。商業誌としての利益追求よりも、「読む人の生活をよくする」ことを第一に掲げ、今後も広告は一切掲載しない方針という。その理念に共鳴した多くの読者が、創刊号の発売日を待ちわびていたという。
編集後記で花森氏は、「ほしいものは つくればいいのです」と記し、豊かさとは何かを改めて問う姿勢を示した。
この『美しい暮しの手帖』は、やがて日本の生活誌の草分けとして、戦後の家庭文化に長く影響を与えることとなるだろう。
— RekisyNews 生活文化部【1948年】