マゼラン艦隊、セビリアを出航──西回り航路を目指し未知なる大洋へ

【セビリア 9月20日】

本日、スペイン王カルロス1世の命を受けたポルトガル人航海者フェルナンド・マゼラン(フェルナン・デ・マガリャンイス)率いる探検艦隊が、セビリア近郊の港を出航し、大西洋へと向けて船出した。艦隊は5隻の船と265人の乗組員から成り、最終目的は「モルッカ諸島(香料諸島)」への西回り航路の開拓である。

マゼランはかねてより、「アメリカ大陸の南端を迂回すれば、アジアの香料地帯へ西から到達できる」との信念を抱いていた。ポルトガル国王との意見の対立からスペインに仕官した彼は、カルロス1世から正式な後援を取り付け、約1年にわたる準備期間を経て今回の大航海に踏み切った。

艦隊の構成は、旗艦「トリニダード号」を筆頭に、「サン・アントニオ号」「コンセプシオン号」「ビクトリア号」「サンティアゴ号」の5隻。航海にはスペイン人・ポルトガル人のみならず、イタリア人・フランス人・ドイツ人といった多国籍の船員が参加している。

航路の大部分は未踏の海域であり、補給や気候条件、現地先住民との接触など、多くの困難が待ち受けることは必至とみられる。マゼラン自身も、「神と国王のために命を捧げる覚悟で臨む」と出航前に語った。

今回の航海が成功すれば、スペインは東方貿易における新たな覇権を手にすることとなり、ポルトガルとの植民地競争においても大きな地政学的転換点となるだろう。

出航の港には多くの市民や貴族が詰めかけ、祈りと歓声の中で、艦隊は静かに川を下り、やがて大西洋の水平線の彼方へと姿を消していった。

— RekisyNews 航海通信部【1519年】

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