【ロンドン 9月17日】
今週、各地の天文台および一般観測者の間で注目を集めていた壮大な彗星が、本日、太陽表面からおよそ46万キロメートルという驚異的な距離で接近し、天文学界に新たな驚きをもたらした。この彗星は、日の出直前や日没直後の太陽の近傍でも、肉眼で明瞭に観測できるほどの明るさを放っている。
彗星は今月上旬より南半球を中心にその姿を現しており、尾を大きく引いた雄大な姿はすでに多くの観測者を魅了してきた。中でも本日の近日点通過は、まさに天体ショーの頂点とも言うべき現象であり、多数の天文学者が望遠鏡を太陽の周囲に向け、慎重な観測を続けている。
この彗星は、かつて1858年に世間を驚かせたドナティ彗星に匹敵、あるいはそれを凌ぐほどの明るさとされ、昼間でも双眼鏡で確認できるほどの光度を誇っている。一部の報告によれば、尾は太陽から夜空を縦断するように伸び、地平線近くにまで達する様子も目撃されたという。
英王立天文台の関係者は、「彗星がここまで太陽に近づいてなお崩壊せずに輝いているのは極めて珍しい。おそらく“太陽すれすれ族(サングレーザー)”と呼ばれる軌道を持つ彗星群の一つに属するのではないか」と分析。今後数日間の動向に注目が集まっている。
市民の間でもこの“光の剣”の出現に驚きと感嘆の声が上がっており、一部地域では「不吉の兆し」とする迷信的な噂も広がっているが、多くはその幻想的な光景に心を奪われているようだ。
この彗星が再び地球に接近するには、数百年から千年以上の時を要する可能性が高いとされており、まさに一生に一度の天体現象として記憶に刻まれることとなりそうだ。
— RekisyNews 科学面 【1882年】