【ブエノスアイレス 9月16日】
本日未明、アルゼンチン全土で軍部を中心とした反ペロン派による武装蜂起が発生し、フアン・ペロン大統領は首都を離れ、事実上の失脚となった。政府筋の発表によれば、大統領は軍の圧力を受け辞任に追い込まれた模様で、軍政移行の準備が進められている。
この動きは「自由革命(Revolución Libertadora)」と呼ばれ、コルドバ州やロサリオなどで蜂起した反体制部隊が、首都ブエノスアイレスへ進軍。空軍機による空爆も報告されるなど、全土が混乱に陥った。政権中枢はすでに軍の管理下に置かれており、大統領府カサ・ロサーダの周辺には戒厳令が敷かれている。
フアン・ペロン氏は1946年の大統領就任以来、労働者層の支持を背景に強力な指導体制を築いてきたが、近年はカトリック教会との対立や言論統制、経済の低迷などにより、国民の支持を徐々に失っていた。今年6月には軍による空爆未遂事件が発生するなど、政情不安が続いていた。
今回のクーデターにより、ペロン政権下で形成された官僚機構や労働団体の行方にも大きな変化が予想される。また、国外に退避したペロン大統領の今後の動静や、ペロン主義(ペロニスモ)の残る影響力についても注目が集まっている。
軍政当局は、「新たな秩序と国民の和解」を掲げ、民主的体制の回復を約束しているが、国民の間では、再び不安定な時代へと突入するのではないかとの懸念も広がっている。
— RekisyNews 南米面 【1955年】