【アンカラ 9月12日】
本日未明、トルコ共和国で軍による大規模なクーデターが発生し、陸海空三軍と憲兵隊の最高司令官であるケナン・エヴレン参謀総長が国家の全権を掌握したと発表した。軍は国会を解散し、全政党の活動を停止、夜間外出禁止令と報道統制を敷くなど、事実上の軍政を開始した。
この行動は、政治的不安定と国内の深刻な暴力の急増を受けてのものとされる。1970年代末から続く極左・極右両派のテロや暴動、失業率の上昇、経済の混迷により、民主的な統治の限界が指摘されていた。特に議会では、連立交渉が難航し、長期間にわたって大統領も選出できない異常事態が続いていた。
エヴレン参謀総長は国営放送を通じて国民に向け、
「我々は国家の崩壊を防ぐため、憲法に基づく措置としてこの決断を下した。秩序と平穏、国民の統一を回復することが目的である」
と声明を発表した。
今回のクーデターはトルコ共和国史上3度目の軍政であり、1960年、1971年に続く軍の介入となる。だが今回は、すべての政党の活動を即時停止した点で、より徹底的な統制が取られていると専門家は指摘している。
市内の道路には戦車が配備され、政府関係者や労組指導者の一部は拘束されたとの情報もあるが、軍は市民に対し冷静な対応を呼びかけている。国際社会はこの事態を注視しており、アメリカやNATO諸国は「トルコの民主主義と人権の尊重」を求める声明を出した。
民主国家トルコに突如訪れた軍政の夜明け。その行方に、国内外からの緊張が高まっている。
— RekisyNews 国際面【1980年】