【東京 9月12日】
本日発行の『都新聞』紙面にて、中里介山による新作長編小説『大菩薩峠』の連載が開始された。舞台は甲州・大菩薩峠。幕末を背景に、一人の剣士・机龍之介の数奇な運命と葛藤を描く壮大な物語であり、早くも読者の関心を集めている。
著者の中里介山(本名:中里弥之助)は、西多摩郡出身の気鋭の作家で、これまでも歴史や人間心理に鋭く切り込む筆致で注目されてきた。今回の『大菩薩峠』では、主人公・龍之介が盲目の男を突如として斬り捨てるという衝撃的な場面から幕を開ける。読者に善悪の境界を問い、宿命に翻弄される人間の姿を描こうという試みは、新聞小説の枠を超えた文学的野心すら漂わせている。
都新聞の編集部によれば、「これまでにないスケールと筆力。今後10年、いやそれ以上の長期連載も視野に入れている」としており、作品の展開に大きな期待が寄せられている。
剣と哲学が交錯する新たな時代小説の到来に、文壇からも注目の声が上がっており、今後の連載の行方が注目される。
— RekisyNews 文化面【1913年】