【江戸 9月12日】
江戸幕府は本日、今後、高位・高徳の僧侶に与えられる「紫衣(しえ)」の授与において、朝廷からの勅許を必要としない方針を正式に通達した。これにより、古来より天皇の権威とされた僧侶への栄誉が、幕府の裁量下に置かれることとなり、朝幕間に波紋が広がっている。
「紫衣」は、格式ある僧侶が身にまとうことを許される染色袈裟であり、宗教界における権威の象徴とされてきた。特に近年は、天皇の勅許を得た僧が朝廷と寺院の橋渡し役として重用される場面も多かったが、幕府はこれを「過度な恩典の濫用」として問題視していたとされる。
今回の決定により、以後は幕府の許可なく紫衣を授与する行為は禁止され、これに違反した僧侶の任命や昇進も無効とされる見通しである。
背景には、特定の寺院や僧侶が朝廷と密接な関係を築くことで、幕府の宗教統制が形骸化することへの懸念があるとみられる。特に天台宗・真言宗を中心とする大寺院の勢力拡大に対し、徳川政権が明確な警戒感を示した形だ。
これに対して、朝廷内では「皇室固有の権能への干渉」とする不満の声も上がっており、今後の対応次第では政教間の緊張が高まる可能性もある。
— RekisyNews 政治面【1629年】