東京・大阪でカラーテレビ本放送開始 — 映像文化、新たな時代へ

【東京 9月10日】

日本のテレビ放送史に新たな一歩が刻まれた。10日、東京と大阪の計5放送局にて、カラーテレビの本放送が一斉に開始された。これにより、白黒画面が当たり前であった家庭のテレビに、ついに「色」が加わることとなり、視聴者の間では「まるで劇場で観ているようだ」との驚きと感動の声が相次いだ。

本放送を開始したのは、東京のNHK、日本テレビ、KRT(TBS)、大阪のNHK、大阪テレビの計5局。午前中から各局で特別番組やカラーテスト映像が放映され、放送機器の調整も兼ねた運用が続けられた。中でも注目を集めたのは、芸能番組や自然の風景、スポーツ中継の試験放送で、出演者の衣装や紅葉、競技場の芝の色彩など、これまで白黒では伝えきれなかった映像の豊かさが鮮やかに表現された。

放送関係者は「ようやくここまで来た。国内外の技術協力と努力の結晶だ」と述べ、今後の普及に向けた意気込みを語った。

もっとも、カラーテレビの導入はまだ始まったばかりであり、家庭への普及は課題が残る。現在、市販されているカラーテレビ受像機の価格は30万円前後と高価で、一般家庭にはまだ手が届きにくい水準だ。また、カラー放送対応の番組数も限られており、しばらくは白黒放送との併用が続く見込みである。

それでも、広告業界や家電業界ではすでに「カラー時代の到来」に向けた動きが活発化しており、カラーテレビの普及によって番組制作や家庭生活のあり方が大きく変わるとの期待が高まっている。

今回の本放送開始は、わが国の放送文化が「観る」から「感じる」段階へと進化しつつあることを象徴する出来事であり、今後の発展が注目される。

— RekisyNews 科学技術面【1960年】

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