【ヴェネツィア 9月10日】
第12回ヴェネツィア国際映画祭にて、日本の黒澤明監督による映画『羅生門』が、最高賞である「金獅子賞」を受賞した。日本映画が欧州の国際映画祭で主要賞を受賞するのは史上初めての快挙であり、日本の映画界にとって歴史的な一日となった。
『羅生門』は、平安時代の京都を舞台に、森で起きた武士の死を巡り、目撃者や当事者の証言が食い違うという構成で、人間の心理と真実の多面性を描く作品。斬新な語り口と映像美、そして主演の三船敏郎らの迫真の演技が高く評価された。
映画祭の審査委員会は、「芸術的完成度が極めて高く、物語と映像が国境を越えて観客に訴えかける力を持っている」と評し、日本から初めての金獅子受賞となった。同作の上映後には、会場に集まった観客や関係者から長い拍手が送られ、作品の持つ力が国際的にも強く印象づけられた。
黒澤監督は授賞の報に「日本の映画が世界に通じると信じていたが、こうして形になるとは夢のようだ」と語り、製作に携わったスタッフや出演者への感謝を述べた。
国内では、同作の構成の斬新さやテーマの難解さから当初は賛否が分かれたが、今回の受賞により再評価の声が高まっている。今後は海外での上映や配給も予定されており、日本映画への国際的注目が高まることが期待される。
この受賞は、単に一作品の功績にとどまらず、日本の映画界全体に新たな道を開くものとして、大きな意義を持つこととなろう。
— RekisyNews 文化・芸能面【1951年】