【東京 9月10日】
国内初となる本格的な映画製作会社「日本活動写真株式会社(略称:日活)」が10日、正式に発足した。これは、これまで東京・京都・横浜などで活動していた複数の活動写真業者が統合する形で設立されたもので、国産映画の質的向上と製作体制の近代化を目指す、画期的な試みである。
今回の統合には、横田永之助の「横田商会」、福宝堂、吉沢商店といった主要な活動写真興行・製作業者が参加。これにより、従来は地域や興行主によって分断されていた製作・配給・上映の体制が一本化され、映画事業が本格的な産業として発展する基盤が整うこととなる。
本社は東京市に置かれ、今後は京都に製作所を設ける構想もあるという。すでに活動写真は浅草や新世界などの寄席・常設館を中心に急速に広まっており、芝居や講談に代わる新たな娯楽として庶民の間に定着しつつある。
新会社では、和製の脚本・俳優・監督による純国産の作品制作を推進する方針で、これまで主流であった外国映画への依存から脱却することを目指す。設立の中心人物である横田氏は、「これからは日本人の手で日本人の物語を描く時代になる。海外にも通用する作品を生み出したい」と語った。
また、近年は活動写真を上映しながら説明を加える「弁士」の人気も高まっており、劇場文化と映画の融合という日本独自の進化も注目されている。
日活の発足は、これまで「活動写真」が一部の興行師の手による小規模な娯楽であった時代から、国家的産業へと変貌を遂げる第一歩となるだろう。今後の作品展開に国内外の関係者が注目している。
— RekisyNews 経済面 【1912年】