モーツァルトの新作歌劇『皇帝ティートの慈悲』、プラハで華やかに初演

【プラハ 9月6日】

 神聖ローマ皇帝レオポルト2世の戴冠式を祝し、音楽の都プラハにて、作曲家ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによる新作歌劇『皇帝ティートの慈悲(La clemenza di Tito)』が本日初演を迎えた。

本作は、ローマ皇帝ティトゥスの寛容と統治者としての高潔さを描いたオペラ・セリア(正歌劇)で、メタスタジオの古典台本をベースに、詩人マッファイによる再構成が施された。戴冠の祝賀行事として急遽委嘱された本作を、モーツァルトはわずか18日間という驚異的な早さで完成させたと伝えられている。

初演はプラハの国民劇場にて開催され、厳粛かつ華麗な舞台演出と、モーツァルトの繊細で表現力豊かな音楽が見事に融合。皇帝の徳を讃える荘厳なアリア、陰謀と赦しをめぐる緊張感に満ちた重唱などが、観客の称賛を浴びた。

特に注目を集めたのは、登場人物の一人であるセスト役(カストラートの役柄を女性歌手が演じる「ズボン役」)の感情の揺れを見事に描いたアリア「Parto, parto, ma tu, ben mio」。クラリネットの旋律とともに歌われるこの場面では、モーツァルト晩年の円熟した管弦楽法が垣間見える。

戴冠式という政治的背景の中で、古典的なテーマを扱いながらも、音楽には人間の内面や心理を鋭く描くモーツァルトならではの筆致が光る。今後、ウィーンなど他都市でも上演が期待されている。

— RekisyNews 芸術面 【1791年】

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