パリで流血の「虐殺」 収監者数百人が殺害される

 【パリ 9月2日】

フランス革命の渦中にある首都パリで、本日、王党派や反革命派と疑われた収監者が次々と殺害される前例のない惨事があった。テュイルリー宮襲撃(8月10日)以降、王権が事実上崩壊し、立法議会は混乱を極めていたが、連日の敗戦とプロイセン軍の侵攻、王党派蜂起の噂が重なり、市民の不安と怒りが爆発した形だ。

パリ市内の複数の牢獄では、革命支持派の義勇兵や市民による「監獄審判」が行われ、迅速な裁判と称して収監者の有罪・無罪がその場で判定されている。実際には多くが即座に「有罪」とされ、斬首や撲殺で処刑された。現地の目撃者によれば、カルメル修道院跡の収容所では、囚人が次々と庭に引き出され、刃物や棍棒で倒される惨状が広がっているという。

パリ市長ペティヨン氏は暴徒の沈静化を呼びかけたが、市民の怒りは収まらず、革命政府も実質的に事態を黙認しているとの見方が強い。ジロンド派の議員からは「正義なき殺戮は革命の理念を汚す」と非難の声が上がる一方、急進派ジャコバン派は「裏切り者を討つ市民の意思だ」と支持する動きを見せ、議会は真っ二つに割れている。

国境付近では、プロイセン軍がヴェルダンに迫っており、議会内外では「パリに潜む王党派が侵略軍と呼応するのでは」との恐怖が渦巻く。市民の間では「国を守るには内部の裏切り者を許さぬべし」との過激な声も広がりつつあり、虐殺は今後数日間続く恐れがある。

現地に集まった外国特派員らは、パリの混乱を「革命の熱狂が理性を失わせた象徴」と評しており、今回の虐殺が欧州各国に与える衝撃は計り知れない。フランス革命は新たな転換点を迎えている。

— RekisyNews 国際面 【1792年】

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