ハラブジャに死の雲 ── イラク軍、自国民へ化学兵器を使用し5千人殺害

【ハラブジャ 3月16日】

イラク北部のクルド人居住区ハラブジャにおいて本日、人類史上類を見ない凄惨な惨劇が発生した。サダム・フセイン政権率いるイラク軍が、反政府勢力の拠点と見なした同市に対し、航空機から毒ガスおよび神経ガスを投下。静かな街は突如として死の化学兵器に包まれ、無抵抗の住民約5,000人が命を落とすという地獄絵図と化した。

攻撃は午前中から始まり、爆発とともに「甘いリンゴのような臭い」や「塩素の臭い」が街を覆った。避難する間もなく、サリンやタブン、マスタードガスを吸い込んだ住民たちは、呼吸困難や激しい痙攣を起こし、路上や自宅で次々と力尽きた。生存者の証言によれば、変わり果てた家族を抱きかかえたまま絶命した父親や、母親の腕の中で息絶えた赤ん坊の姿が街中に溢れているという。

フセイン政権は、イラン軍に協力するクルド人勢力を掃討する「アンファール作戦」を激化させており、今回の暴挙はその一環と見られる。自国民に対して国際法で禁じられた化学兵器を躊躇なく投入した非人道的な姿勢に、国際社会からは激しい非難の声が上がり始めている。

現場に入ったジャーナリストたちは、毒ガスによる火傷や失明に苦しむ数千人の負傷者の惨状を報告している。この「ハラブジャの悲劇」は、兵器の進歩がもたらした最悪の帰結であり、中東における人権と国際秩序の崩壊を象徴する歴史的な汚点として刻まれることになるだろう。

— RekisyNews 国際面 【1988年】

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