【江戸 3月15日】
本日、江戸幕府は各沿岸の諸大名および天領の代官に対し、日本近海に現れる異国船への対応を定めた新たな法令「薪水給与令(撫恤令)」を発した。これは、食料や燃料を欠いた異国船が漂着した場合、人道的な見地から必要な物資を与えた上で、速やかに帰国を促すよう命じるものである。
背景には、北方海域におけるロシア船の頻繁な接近と、通商を巡る緊張の高まりがある。一昨年、長崎に来航したロシア使節レザノフによる通商要求を幕府が正式に拒絶して以来、北の海では武力衝突の懸念が強まっていた。今回の法令は、「むやみに発砲して戦端を開くのではなく、薪(たきぎ)や水、食料を恵み与えることで、彼らに争う口実を与えず穏やかに立ち去らせる」という、平和的な外交方針を明確にしたものである。
布告によれば、異国船が日本の海岸に接近した際、それが漂流や困窮によるものであれば、地元の役人は警戒しつつも敵対せず、必要な物資を供給しなければならない。ただし、物資の引き渡し後は直ちに退去を命じ、上陸や無断の滞在は厳禁とする方針だ。
江戸の論壇では、この柔軟な対応を「大国の度量を示す名案」と評価する声がある一方、国防の観点から「異国を甘やかす結果にならないか」と懸念する声も上がっている。幕府は、北方の警備強化と並行して、この「撫恤(慈しみ)」の政策を徹底させることで、海上の秩序維持を図る考えだ。
— RekisyNews 外交面 【1806年】
