南氷洋捕鯨に幕 ── 53年の歴史終え、最後の母船が帰路に

【シドニー/東京 3月14日】

本日、南氷洋での操業を終えた日本共同捕鯨の母船「第3次日新丸」が、オーストラリア・シドニー沖を通過し、帰国の途についた。国際捕鯨委員会(IWC)の商業捕鯨モラトリアム(一時停止)の受け入れに伴い、1934年から半世紀以上にわたって続けられてきたわが国の南氷洋商業捕鯨は、本日をもってその歴史に幕を下ろした

「第3次日新丸」を旗艦とする捕鯨船団は、今シーズン、ミンククジラ約1,900頭を捕獲。これが最後の商業的な水揚げとなる。かつて「クジラ1頭で七郷が潤う」と言われ、戦後の深刻な食糧難において国民の大切なタンパク源となった捕鯨産業だが、反捕鯨を掲げる国際世論の強まりと法的規制の前に、ついにその旗を降ろすこととなった。

捕鯨基地として栄えてきた山口県下関市や宮城県石巻市などの港町では、船団の帰還を待つ家族や関係者から、産業の衰退を嘆く声が上がっている。一方、政府は今回の商業捕鯨撤退を受け、資源管理の科学的データ収集を目的とした「調査捕鯨」への移行を検討しており、海峡の伝統と文化をいかに守るかという新たな模索が始まろうとしている。

日本の食卓に寄り添い、戦後復興を支えた巨大な「母なる船」の影が南の海から消える。一つの時代の終わりを告げる汽笛は、国際社会における資源保護と伝統文化の対立という、重い課題を私たちに残している。

— RekisyNews 社会面 【1987年】

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